-豊中市- グラス片手に物語に酔う 『絵本Cafe&Bar』で大人ならではの絵本の楽しみ方を
2025.08.03
渕上さんがカウンターで読み聞かせをしてくれるが、客も読み聞かせにチャレンジできる
毎月第三金曜日、豊中市蛍池のBARで「絵本Cafe&Bar」を開催しているのは、同じ町で保育園を営む保育士の渕上桃子さん。大人が子どもの感性に戻って楽しめる、絵本の魅力について話を聞いた。
渕上さんが、子どもを中心とした多世代交流の拠点として「団欒長屋」を立ち上げたのは2013年。シングルマザーとなって豊中市に転居後、孤立した子育てが不安な時に、地域の人達に助けられた恩を返すためだったという 。
園児たちに1日3回絵本の読み聞かせをするのは、絵本を通じて子ども達の感性を育みたいから。「絵本で四季や五感を感じたり、物語に親しむことで共感力や情緒を育むので、子どもとのコミュニケーションツールとしても最適です」と渕上さん 。絵本を通せば、大人も子どもの気持ちに立ち返って子どもを理解しやすくなるのでは? そして、ゆるりとした空間で日々の疲れを癒されに来てほしい、と「絵本Cafe&Bar」の開催を決心した 。
毎月、店に並べる絵本はひとつのテーマがある 。その中で子どもの頃に読んだ絵本は思い出を懐かしみながらも、大人になり親になったからこその感情が沸き起こるそう。
「大人に刺さる絵本を選んだ時は、ご自身が読み聞かせしながら声を詰まらせる方も。聞いているこちらも涙ぐんでしまい心が洗われます」と渕上さん 。読み聞かせの時間があることで、初対面でも会話が生まれるのも魅力だ 。選ぶテーマは時節や時流を意識する 。やなせたかしを選んだのはタイムリーなだけでなく、やなせたかしの詩が渕上さんの思い出に欠かせなかったから。「印象に残っている詩は“サボテンの花”です 。子どもの教科書に掲載されていて、音読で聞いた時は衝撃でした 。子どもに歌いながら、何度も泣きそうになったアンパンマンマーチの歌詞が訴えるものと同じだったんです 。やなせさんの厳しくも優しい世界は、全世代に知ってほしい」と語る 。
「絵本Cafe&Bar」には、大人に向けた絵本も多く、ここで新しい物語に出会えるのも楽しい 。今後は紙芝居も取り上げたり、サックス奏者でもある渕上さんは音楽と絵本読み聞かせをコラボさせたいという想いもある 。まだまだ広がる“絵本を楽しむアイデア”に期待できそうだ 。

アンパンマン以外のやなせたかしの絵本も多数

「団欒長屋」代表であり、「絵本Cafe&Bar」オーナーの渕上さん。2021年に「あしたのまち・くらしづくり活動賞」にて内閣官房長官賞を受賞している
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