-北摂- NFTで描く地域活性化の未来 北摂スタンプラリーから始まる広がり
2025.09.07
北摂の7市3町(吹田市・豊中市・箕面市・池田市・高槻市・茨木市・摂津市・島本町・豊能町・能勢町)は、地域回遊と魅力発信を目的に「北摂周遊デジタルスタンプラリー」を実施している。訪問地でNFTスタンプを集める仕組みは、観光振興に留まらず、新しい市民活動や地域のつながりを模索する取り組みとなっている。
7市3町の自治体が連携した「デジタル周遊」
近年、ブロックチェーン技術を背景に、仲介者を介さずデータや価値をやり取りできる仕組み「Web3」が注目されている。その応用のひとつであるNFT(非代替性トークン)は、デジタル上で唯一無二の価値を付与できる記録技術であり、これまではアートや投資で話題に上がることが多かった。しかし現在では、地方創生や観光振興など地域活性化への応用が広がりつつある。その一例が北摂地域で展開される「北摂周遊デジタルスタンプラリー」である。北摂7市3町が連携し、各市町に2箇所ずつ設けられた計20スポットを巡ってNFTスタンプを集める仕組みを導入した。アプリ「EXPO2025デジタルウォレット」経由でスポットに掲示されたQRコードを読み取ることで、その場にちなんだオリジナルNFTを獲得できる。全スポットを制覇すると特別デザインのNFTが発行され、従来型とは異なる観光と回遊の体験が提供されるという取り組みだ。※10/13(月)まで
成功事例が示す 地域活性化の可能性
こうした仕組みの特徴は、単なる観光だけにとどまらない点にある。ブロックチェーン上に記録されるNFTは改ざんが困難であるため、参加者の活動履歴を安全に証明でき、その結果として地域貢献や消費行動の可視化が可能となる。たとえば商店街への訪問履歴やボランティア活動の記録など、評価につながるデータとしての活用も視野に入る。
他地域に目を向けると、NFT技術を活用した成功事例がいくつも存在する。山形県西川町では、日本で初となる自治体発行のデジタル住民票NFTを販売し、これを提示して町の温泉を利用できる特典を付与する仕組みを導入した。デジタル村民の誘致に成功し、リアルの訪問者数を着実に増加させた。
また、新潟県長岡市山古志地域では、NFTを購入することで得られる「デジタル村民権」が地域外の人々も参加しやすい環境を整え、地方の課題解決やイベントへの参画を促進。実際にデジタル村民の数がリアル住民を上回るほど盛り上がりを見せている。
これらの事例から、NFTやWeb3技術は地域の活性化において新たな可能性を持つツールであることがうかがえる。観光客や関係人口の創出、商業や市民活動の動機づけなど、その用途は多様だ。北摂スタンプラリーもまた、その流れの一端として、地域住民や来訪者にWeb3の仕組みを“体験させる機会”となっている。
普及に向けた課題と展望
一方で、高齢者を含む幅広い世代にとってNFTやデジタルウォレットはまだ馴染みの薄い概念であり、課題も残されている。そのため各自治体では、スマートフォンの操作体験会や説明会などを組み合わせることで、誰もが参加しやすい形での普及が求められている。
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