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-千里エリア- 「自分で選ぶコミュニティ=選択縁」が地域を元気にする「千里祭り」

2025.12.08
今年11月2日、3日、せんちゅうパルで行われた千里祭りの
オープニングイベント「The 千里祭り2025」の様子。

 

2022年から始まった「千里祭り」は、「このまちと、学ぼう!遊ぼう!」をコンセプトに、地域住民が主体となって実施するイベント。地元の企業、市民団体、大学などが連携し、仕事体験やワークショップなどを千里エリアの各地で展開し、地域の絆を深め、子どもたちの成長を支援することを目指しているという。今年で4年を迎えたこの「千里祭り」について、発起人の野村仁志さんを取材した。

住民と事業者が協力する 新しいコミュニティのかたち

野村さんは、茨木市山手台の活性化プロジェクトへの参加を通じて、「住民主体だけでなく、地元事業者の視点を取り入れる重要性」を強く認識したという。「かつて商店街には、自発的に祭りを企画し、自然な形で地域経済が回るエコシステムがありました。これを参考に地域のメンバーが主体的に一体となって取り組むことが、持続的なまちの活力に繋がるのではないかと思っています」と語る。千里祭りの特徴は、事業者が積極的に関わる点にある。野村さんは住民目線に加え事業者目線で企画を立案することで、事業者をイベントに巻き込むことに成功した。参加事業者は年々増加し、今年は約50社が参加。一つの場所で実施するイベントだけではなく、事業者の店舗を訪問する形式を採用することで、参加者と事業者の双方にメリットのある運営を実現している。

野村仁志さん。「自分が住んでいるまちをもっと良くしたい」という思いからこの活動を開始。昨年、50歳から大学院に通い、地域コミュニティの研究を進めている。

自発的な参加と「選択縁」型 コミュニティの広がり

この千里祭りの活動において重視されているのが、「自分で選ぶコミュニティ=選択縁(せんたくえん)」という考え方である。祭りという地縁の枠組の中にアートやスポーツなど、テーマ型のコミュニティに参加できる仕組みが内在している。「特に北摂地域は転勤族が多く、親や友人が近くにいない子育て世代が孤立しやすいという課題がある。この『選択縁』は、趣味や関心でつながることで交流が生まれ、そして困った時の助け合いの場となり、個人の生活の豊かさから、地域全体の安心感につながると考えています」と野村さんは話す。

また、千里祭りから派生した「せんプラCafe」は、年に一度の祭りだけでなく、継続的なつながりを生み出す場として誕生した。月に1回、交流会やワークショップを実施し、子育て世代の孤立を防ぎ、地域で支え合うコミュニティづくりを目指しているほか、FM千里で「千里の子育てが楽しくなるラジオ」を放送するなど、情報発信にも力を入れている。

境界を越え、世代をつなぐ地域づくりとブランディング

千里ニュータウンは誕生から60年以上が経過し、世代交代とともに地域への関わり方が多様化している。「新規住民や事業者の視点では、千里ニュータウンという垣根はあまりありません。千里祭りはその視点を取り入れ、千里ニュータウンの境界を越えた周辺地域も含めての広域的な取り組みです」。野村さんは幅広いエリアの住民や事業者の参加を促すことで、さらに地域の活性化を図る。

また千里中央で実施する「オープニングイベント」では、音楽やアートの力も再認識されている。ストリートピアノのイベントでは、誰もが自由に演奏できる場を設けることで、ハンディキャップを持つ人や子どもたちも気軽に交流し、音楽が持つ人々をつなぐ力を実感した。来年には、上新田(上新田は、千里ニュータウンの中央に位置するが、集落があったためニュータウン開発からは除外された地域)の400年の節目を迎え、地域の歴史や伝統を次世代へつなぐ取り組みも進められており、千里祭りでの連携企画も検討している。

さらに、地域の魅力を高めるためには「内側からのブランディング」が重要であると野村さんは語る。「外に向けて魅力を発信するだけでなく、住民や地元事業者がまず自分たちのまちを心から好きになることが、最も強い魅力発信につながる。一人ひとりが街に誇りを持てるような地域内のブランディングを、行政や事業者と協力して推進していきたい」と話す。

千里祭りは、住民と事業者が自発的な意思で関わり合い、「選択縁」という新しいモデルを通じて、世代や地域の垣根を越えたつながりを生み出している。「完璧を求めず、自由で安心できる場をつくる」という理念のもと、誰もが主役になれるまちづくりが進展している。今後も地域の活力を生み出すため、行政と住民、地域事業者が協力し合い、誰もが参加しやすい場づくりを目指す。

千里祭りに参加するみのおエフエム。11月29日 (土) 開催する「タッキー81.6 みのおエフエム」では、ラジオDJの仕事体験ができる。

 

子育て世代が集う「せんプラcafe」。「ゆるい活動」で継続的な活動を目指す。インスタグラムなどでも情報を発信している。

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