4月から小学5・6年生で英語が教科化
2020.02.25
これからの英語教育
英語教育が大きく変わろうとしている2020年。なかでも小学5・6年生で、この4月から英語が正式に教科(外国語科)となります。北摂の各市はどのように取り組んでいくのか、めざすべき姿を伺いました。
新学習指導要領の英語は「4技能5領域」に
小学校では2020年度から新しい学習指導要領がスタート。それに伴い、英語学習も大きく変わります。今まで小学5・6年で行われていた「外国語活動」が、この4月から小学3・4年生で必修化となり、5・6年生では正式な教科としての「外国語(英語)科」の授業が始まります。
外国語活動では「聞くこと」「話すこと」の言語活動を通して、コミュニケーションを図る素地となる資質・能力を育成することを目指してきましたが、教科化になることで「聞くこと」「話すこと」に加え、「読むこと」「書くこと」の力の育成も求められていくことになります。
また、新学習指導要領の英語では、これまでの4技能が、4技能5領域となったことも大きな変化です。これは「話すこと」が「話すこと(発表)」と「話すこと(やりとり)」の2つに分かれたためです。前もって準備(用意)してスピーチのように話すことから、即興的に相手とやりとりできるまで指導することが求められています。
授業時数は、2020年度から、小学5・6年生で70時間(週2コマ)、小学3・4年生で35時間(週1コマ)行われることになります。
授業は担任とALTのティームティーチングで
小学校での英語授業は中学校や高校のように専科の教員ではなく、他教科と同じように担任の教員が行います。今まで経験のない英語授業ゆえに、各市とも、教員の指導力向上のための研修を積極的に実施。たとえば高槻市の場合、スモールトークや読み書きの指導など、より実践的な内容を学んでいます。
5・6年生の英語の授業では、3・4年生時の外国語活動を踏まえ、文字や単語を読んだり、簡単な語彙を書き写す活動にも取り組みます。各市とも教科書のほかに文科省作成の補助教材(DVD等)を使用し、担任を中心に授業を進め、ALT(外国語指導助手)は「英語を話すモデル」としてティームティーチングをしていきます。成績については、他の教科と同様に、学習指導要領に示された評価の観点で評価をしていきます。特に英語は、聞いたり話したりする活動(スピーチや発表)を通して評価することになるようです。
【高槻市の取り組み】
先行して英語の授業を実施
1・2年生でも短時間学習を
高槻市では平成30年度から、新しい学習指導 要領に示された授業時数を先行実施しています。 3・4年生は教材『Let’s try!』を使用して週1時間 (年間35時間)の外国語活動を、5・6年生は教材 『We can!』を使用して週2時間(年間70時間)の 外国語活動の授業を行っています。授業は『聞く こと』、『話すこと』に『読むこと』、『書くこと』も加 えた言語活動を通じ、コミュニケーションを図る 素地や基礎となる資質・能力を育成することを目 的とします。これから、市で採択した教科書を使 用し、担任が中心にALT(外国語指導助手)とと もに、授業を行うことになります。
1・2年生も週2回
高槻市では、小学1・2年生は教育課程外で、週2回程度、始業前か5時間目前の15分間で短時間の英語学習(ショートイングリッシュタイム)に取り組んでいます。英語の音や表現に慣れ親しむ目的で、教材として、DREAM(大阪府公立小学校英語学習6カ年プログラム)を活用しています。
取材協力 / 高槻市教育委員会事務局 教育センター
【茨木市の取り組み】
CAN-DOリストや
評価規準を活用し、評価を行う
茨木市では、小学3・4年生についてはすでに2年前から年間35時 間の外国語活動を実施。そのうち、NET(Native-speaking English Teacher)は1学級あたり年間15回授業に入っています。小学1・2年生 についても、NETが授業に入り、年間3回以上授業を実施しています。 小学5・6年生については、4月から教科化となるため、基本的には担任 が教科書を中心に音声教材等を使いながら授業を進めていきます。また、 NETについては、1学級あたり年間15回程度授業に入る予定です。目指す 子どもの姿を表したCAN-DOリストや評価規準を活用し、それをもとに英 語の力がついたかどうかを評価していきます。
英語シャワーデイ
平成20年度から市教育委員会と学校が一丸となって、小・中学校での外国語 活動・英語教育を推進し、市立の全小・中学校に外国語指導講師「N E T (Native-speaking English Teacher)」を配置しています。現在、その推進の 目玉となっているのが「英語シャワーデイ」です。小学校においては当日は1学級 に5名のNETを配置し、授業を行います。また、授業だけでなく、5名のNETが 登下校のあいさつや給食時間中の交流なども英語で行い、子どもたちはまさに 「シャワー」のように英語を浴びることができます。中学校でも英語シャワーデイ の日には、複数のNETで授業を行っています(各校で随時行っています)。
取材協力 / 茨木市教育委員会 学校教育推進課
【摂津市の取り組み】
ALTは毎週、年間を
通した派遣で「身近な存在」
摂津市では、平成29年度より小学校全校で1から6年生の全学年で大阪府教育委員会が開発した英語学習6カ年プログラム「DREAM」を活用。令和2年度の本格実施に向けて、各校では移行期間として昨年度から3・4年生で15時間以上、5・6年生で50時間以上の外国語活動の時間を設け、準備を進めてきました。また、昨年度からALTの派遣回数を増やし、4月から1年間を通して派遣。小学校では年間35回、(大規模校の摂津小学校で今年度から60回)、中学校では105回程度派遣しています。また教員の英語教育に関する研修は、小中学校の教員が合同で受講することを基本としています。小学校外国語を新しい教科ととらえ、中学年での外国語活動と中学校外国語をスムーズにつなぐことができる授業づくりをめざしています。
English Day
平成28年度から始めた、ALT(外国人英語指導助手)5人がそろ って小学校にやって来る「English Day」は、児童に大人気のイベ ントになっています。今年度は助っ人ALTの2人を加えた7人が オリンピックをテーマに、「Settsu Olympic」と題して「English Day」を開催しています。スポーツに関連したゲームを通して、全 ての児童がALTとの1対1のコミュニケーションを経験することが できるよう企画しています。ランチイベントには恒例の英語放送局 や新企画のオリジナルストーリー読み聞かせ「Settsu Taro」など、 1日を通して児童が英語に慣れ親しむ機会を設定しています。
取材協力 / 摂津市教育委員会 教育支援課
【吹田市の取り組み】
小学校1年生より外国語活動を実施
小学校4年生・6年生では体験活動も実施
吹田市では、教育課程特例校として小学校1年生から外国語活 動を実施しており、専科指導教員や英語指導助手の配置及びデジ タル教材等の活用により効果的に学習を進めている。また小学校4 年生対象の「すいたえいごkids」ではAETとビンゴやクッキング等を 英語だけで行う体験活動を実施している。さらに小学校6年生対象 の「すいたえいごweek」ではEXPOCITYにあるOSAKA ENGLISH VILLAGEで、小学校で学んだ英語を活かしレストランや航空機内等 のシチュエーションの中で、実際に ネイティブスピーカーとのやり取りを 行う実践の場としている。小中一貫 した英語教育により「世界的視野を 持ち社会貢献できる真のグローバ ル人材の育成」を目指している。
取材協力/吹田市教育委員会 指導室
【豊中市の取り組み】
中学校英語科教員が小学校で授業を行う
「英語教育コアスクール」を実施
豊中市では外国人英語指導助手派遣を拡充し、生きた英語学習の環境づくりを進めている。英語教育コアスクール(英語教育研究校)においては、中学校英語科教員の小学校への乗り入れ授業の実施や評価の研究実践を進めるとともに、その成果を広く発信し、市内小・中学校の英語教育の一層の充実をめざしている。小学3・4年生の「外国語活動」の授業は、言語活動を中心とし、英語に慣れ親しみ、言語や文化等についての理解を深めている。小学3年生からALT(外国人英語指導助手)とのティームティーチングを実施しており、英語でのコミュニケーションに慣れ親しむ機会が充実するよう実施している。
取材協力/豊中市教育委員会 学校教育課
【箕面市の取り組み】
小学1年生より英語の授業を実施
小学5・6年では45分授業を週2回行う
箕面市では平成30年度から、小学1・2年生でも英語の45分授 業を行っている(小学5・6年は週2回)。小中の接続をよりスムーズ にすることで、中学生の即興的なやりとりをする能力をさらに伸ばし ていくことを目指し、指導案もリニューアル。文科省作成の補助教材 「Let’s Try!」および「We Can!」をもとに、小学校1年生~6年生ま で全時間分の指導案「Enjoy English」と「Enjoy English」をもとにし た15分モジュール学習用の映像教材をオリジナルで作成し、合わせ て市内全校で使用している。その 成果として、箕面市の中学3年 生の英語力が英検IBAの実施に より、英検3級相当以上の割合 が79.7%と、全国平均42.6%を 大きく上回る結果となっている。
取材協力/箕面市教育委員会 学校教育室
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