映画「スマスイ」こころに残るストーリーと水族園の風景 ~神戸・京都・大阪で約7,000人を動員~
2020.03.13
施設の建て替えが決定した神戸市立須磨海浜水族園(神戸市須磨区)が、昨夏に公開した映画がじわじわと広がりを見せている。園内から始まり市内数か所の映画館などを経て、今年1月末には京都や大阪でも各1週間上映。合計約7,000人を動員した。「ここまで広がるとは想定外」と関係者もうれしい悲鳴を上げている。
映画は水族園の現況を記録映像で残し、次代へ記憶を繋ぐために撮られた、スマスイと神戸が舞台のヒューマンドラマだ。撮影のきっかけについて、映画のプロデューサーでもあり須磨海浜水族園に25年勤務している飼育教育部長の大鹿達弥さんは「きっかけは2年前、リニューアルから32年の記録として動画資料を作るつもりでした。ところがただの記録では面白くない、もっと娯楽性の高いストーリーを持たせたフィクションを作ろうということになったんです」と話す。
ストーリーは、職と家族を失い再就職先として水族館に来た中年飼育員と、それぞれパートナーとの問題を抱える3組のカップルを中心に展開する。映画内で実際に働く飼育員や生き物たちも登場。園内のあちこちが舞台となり、慣れ親しんだスマスイが堪能できる。大鹿さんも「出たいとは一言も言ってませんが、実際のスタッフが出演した方が、信ぴょう性があるだろうということで配役されました」と主人公に影響を与えるキーパーソンとして出演している。
映画「スマスイ」のポスター
映画では阪神・淡路大震災で被災した当時の様子も。幸い建物や水槽の損壊は免れたが、ライフラインが休止したことで多くの生き物の命が犠牲になった。「一番しんどい体験でした。魚たちは全部死んでしまうし、避難所に指定されていないのに大勢の避難者が詰めかけ、対応に追われた。これを経験した者も今は4名だけが残っています」現在100名を超える多くのスタッフにとっても貴重な資料となった。
震災当時の様子
2019年夏休み、まずは園内で上映された。
「お客さんは魚を観に来るわけだし、70分も映画をじっと観ている人もそんなにいないだろうと思っていました。ところが映画目当ての来園者も多かったと聞き、驚きでした」。
「我々の運営は3月末で終了になるんです。そこからは新施設への準備段階として、新しい運営会社がスマスイの営業を引き継ぎます」。
そこで感謝を込めて、3月29日まで特別展「10年間ありがとう!!ほんま、いろいろあったなー」を開催。現在の運営会社が10年間で行った様々な企画のパネル展示のほか、映画「スマスイ」上映コーナーも設ける。2月24日には大阪ミナミで上映イベントを開催、3月1日にはDVD(税込2,000円)が発売される。
「スマスイは3世代で来園してくれています。幼少期は遠足や親に連れられて、中学時代は友達同士で遊びに、その後年頃になって寄り付かなくなり、大人になって忙しくて思い出しもしない。ところが結婚して子どもとまた来てくれて、しばらくすると孫と一緒にまた来園。面白いですね。地元に愛される水族園で楽しみながら子育てしてほしいですね」。
新施設は、須磨海岸一帯を大きく開発したリゾート施設となる予定で、宿泊施設も含まれる。また国内では鴨川シーワールド(千葉県)と名古屋港水族館(愛知県)に次いで西日本初となるシャチのショーが目玉となる予定だ。
須磨海浜水族園は2021年2月まで従来通り営業。2021年3月以降、本館以外の施設は解体工事が始まり、2023年5月まで本館のみの営業。2024年3月末に新施設「神戸須磨シーワールド」(仮称)がオープン予定。
●神戸市立須磨海浜水族園のあゆみ
1957年 神戸市立須磨水族館として開業
1987年 現在の須磨海浜水族園開業
1995年 阪神淡路大震災で被災
2010年 指定管理者制度により民間会社(須磨海浜水族園共同事業体:代表企業 株式会社アクアメント)による運営へ
2019年 映画「スマスイ」製作
2020年3月8日DVD発売(税込み2,000円)
2024年春 完全民営化 新施設「神戸須磨シーワールド」(仮称)オープン予定
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