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南吹田琥珀街を訪ねて

2020.06.24

街とは、そこに暮らす人たちの生命の営みでつくられるもの。暮らす人の想いが息づく街づくりに取り組む人と、そこに暮らす街人(まちびと) を訪ねた。

2019年3月16日に開業した、JRおおさか東線「南吹田」駅。そこから徒歩7分のところにあるのが「南吹田琥珀街」だ。ここは、古い長屋やアパートをリノベーションして、まちに安心感や落ち着きをもたらし、そこで暮らす人々の想いを大切にしながら、ぬくもりや懐かしさを補完するプロジェクト。WEBサイトで見かけたその街になぜか惹かれるものがあって、出かけてみることにした。

 

このプロジェクトのディレクターを務める川端さんは、従来の不動産のイメージにとらわれない物件情報を発信するサイト『KAWABATA channel』の運営のほか、賃貸や売買物件の仲介、不動産活用やリノベーションの企画を行う京都の不動産屋だ。写真のように時々、週末に京都から家族と連れ立って、この街にやってくる。倉庫をリフォームした空間はまるで秘密基地のよう。ここをベースに街の人たちとのコミュニケーションを楽しんでいる。幼い娘さんと息子さんも路地で楽しそうに遊んでいて「ここに来るのは、楽しいから大好き!」と話してくれた。

 

南吹田琥珀街は、古くから住んでいる人々と、新たにここを拠点に活動する人たちが共存するまちだ。カメラマンがスタジオとして使っていたり、システム/ソフトウェア開発会社が事務所として活用したりしている。その中にあって、この4月から街人となった30代の滝井さんは、人とのつながりを持つ場として借りることにしたそうだ。平日は会社員をやっていて、住まいは大阪市内。週末にスポーツサイクルでやってきて、趣味の音楽やキッチンでカレーづくりなどを楽しんでいる。今話題のサードプレイスの個人版といったところだ。また、知り合いの滋賀の農家から送られてくる野菜の販売も行なっている。「この野菜は、人とつながるツールなんです。僕がここに居ても誰が訪ねてきてくれるわけではない。でも野菜マルシェやります、と貼り紙をすれば、気軽に入ってきてくれる。野菜をとおして、普段なかなか話す機会のない人たちとの何気ない会話がとっても楽しいんです」と滝井さん。

琥珀街をそういった使い方で楽しんでくれる滝井さんを川端さんは〝琥珀街の未来〟だと言う。「彼は『KAWABATA channel』からここを知ってくれて、見学に来てくれたのですが、彼の考え方はこれからの琥珀街のあり方の一つだな、と刺激を受けました。このプロジェクトのコンセプトにとても近いものだったので、すぐに意気投合。その日には借りてもらうことが決まりました。ここは誰でも受け入れているわけではなく、この街の人たちとうまくやっていってくれる方、同じ想いを大切にしてくれるかどうかを、実際にお会いして、街を見てもらって、じっくりお話をしてから、街人になっていただくかどうかを決めさせてもらっています」と川端さん。

 

ほかにも居心地の良さそうなカフェ&ショップがあった。若いご夫婦が営む「暮らしの選択屋 マワリテメクル」だ。

2019年11月末にオープンしたこちらは、カフェ、雑貨、洋服のセレクトショップ。カフェでは滋賀の無農薬で育てられた小麦の全粒粉から作られる自家製の天然酵母をつかったパンをメインに、ドリンクや軽食、デザートが用意されている。その一つひとつのメニューは、時間をかけて丁寧に作られるものばかり。「この琥珀街でお店をやろうと思った理由は、通りすがりじゃなく、わざわざ足を運んでいただかないと行けない場所だったからです」と奥様。その言葉どおり、訪れるお客さんもこういったものが食べたいという想いで来店され、時間を気にせず、ゆったりと過ごされているそうだ。

CAFE  MENU(一例)

・マワリテメクルプレートセット 1,500円  ・天然酵母ワッフルセット 1,100円

・天然酵母ホットドッグセット 1,300円  ・鹿肉ミンチカレーセット 1,400円 他

(すべて税別。ドリンクはコーヒー/ティー/ジュースからセレクト)

 

そして、洋服のセレクトショップはご主人の担当。今、取り扱っているのは「tehu  tehu」というブランド。「蝶を採集するための服、がコンセプトのブランドです。ネット販売もしていなくて、取り扱っているショップも全国に10軒くらいしかありません。実際にここに来て見てもらって、作り手の想いをお話させていただいて、気に入った方に選んでいただければいいかな、と思っています」とご主人。

ほかにも店内にはコーヒーや雑貨などが販売されており、そのどれもが体にやさしいものばかり。マワリテメクルという少しめずらしい店名は縄文時代よりもはるか昔にあった文明「カタカムナ」の中の言葉だそう。さまざまな意味を予想されているそうだが、ご夫妻は「世の中のありとあらゆるものは日々めくり、そして巡っていくもの」だというように受け取ったという。琥珀街の古民家を生かした空間が、その言葉どおり、まわりめぐって、新たな人と人のつながりをこれから紡いでいくのだろう。

【暮らしの選択屋 マワリテメクル】

大阪府吹田市南吹田2丁目16番5-6

営業時間:12時〜18時  定休日:火曜・水曜

https://www.instagram.com/mawaritemekuru_sz/

 

 

南吹田琥珀街には、ほかにも「Japan By Van」というレンタルに最適化されたカスタマイズキャンピングカーを作っているスイス人のご夫妻が入居している。訪れた日にはちょうど琥珀街の駐車場でキャンピングカーを制作しているところだった。「日本を訪れる外国のお客さんの〝もっと日本を深く知りたい〟というニーズにお応えするために、古いバンに新たな生命を吹き込むカスタマイズで、快適に過ごせるキャンピングカーを用意しています。もちろん日本の方もご利用いただいています」と話す。

【Japan By Van】

WEBサイト: https://www.japanbyvan.com/

 

こんなふうに、琥珀街には街に共感して、そこで自分の夢を叶えている人たちがいる。「ここは過去のような、未来のような、〝今の街〟だと言えます。建物はできるだけ変えずに、その趣きを生かしながら、なるべく自然な形で経年劣化していく素材でカスタマイズしています。ハード面よりも、ソフト面の使い方とか、使う人が代わって街が変わる、みたいなことをやっていきたい」と川端さん。南吹田琥珀街は、古き良き街並みへの想いを瓦屋根に込めて、新たな街のシンボルとして瓦をカラフルにしている。現在もプロジェクトは進行中で、これからも新たな顔を見せてくれるだろう。

【南吹田琥珀街】

街人になりたい方の見学は、下記公式WEBサイト(ホームをクリック)からお申し込みを

(暮らしの選択屋マワリテメクル は自由に来店可能)

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