SDGs達成に向け「考動」を続ける関西大学 地域との連携を密に大阪・関西万博へ
2023.03.30
SDGsの目標達成に向けて世界で取り組みが進む中、関西大学は全学を横断するプロジェクトのもと、教育研究とSDGsの結びつきを強固にしている。副学長としてプロジェクトの推進に携わる、社会安全学部の高橋智幸教授に話を聞いた。
高橋 智幸/副学長・教授(社会安全学部)
2010年に関西大学社会安全学部に着任。2020年10月より副学長に就任。前学長、前副学長から引き継いだ「SDGs推進プロジェクト」の取り組みを加速度的に発展させている。
全学が一致団結し、SDGs達成へ
2015年の国連サミットでSDGsが掲げられる前から、関西大学では環境問題への取り組みを続けてきた。例えば、緑豊かなキャンパスづくりや、太陽光発電システムの導入などもその一環だ。「SDGsが世界的な目標となったのをきっかけに、これまでの活動を見直し、さらに高い目標を設定しました」と語る高橋教授。そうして生まれたのが、2018年発足の「KANDAI for SDGs推進プロジェクト」だ。学長を頂点に据え、大学、大学院、研究施設、併設校など全学横断の協力体制を作り、スピーディな取り組みへとつなげている。
大学の授業では、基礎知識を学ぶ「SDGs入門」や、企業や自治体から実例を学ぶ「SDGsの実践」を共通教養科目として開講している。一昨年の「SDGs入門」受講者は1000名を超えるほどの人気だった。また、その他にも法政大学と連携して行うコンテストや「SDGsラーニングプログラム」など多種多様な学習環境が用意されている。それらが活用されている背景には、同大学が掲げる「考動力」が強く関与していると高橋教授はいう。
考動力で自分ごとに
自ら考えて動く力は、私たちの暮らしでも大切なもの。それを示す例が、防災分野を専門とする高橋教授が作成に関わった、高槻市のハザードマップだ。従来のハザードマップには、配布してもすぐ捨てられてしまう問題があったという。対策として新たに作成したのが、シール付きのハザードマップだ。
「自分の家、避難場所、危険な箇所などのシールを作り、子どもや家族みんなで考えながらマイマップを作ってもらいます。作る過程で『ここを通って避難するのは危ない』など意見を出し合いますし、自分たちで作ったマップはなかなか捨てられません。自分事として考えられるよう、手を動かしてマップを作る過程が大事なんです。考えて実際に行動することが大切なのは、SDGsの取り組みとも共通しています(高橋教授)」
地域や企業との連携も密に
SDGsの目標達成には、地域社会や企業との連携も欠かせない。ただ、高橋教授によると「各学部の研究分野が細分化されていて、どの研究が企業の課題とつながるのかわかりにくい」問題があったという。そこで、大学の研究成果を一冊の事例集にまとめ、一つ一つの研究がSDGsのどの目標に該当するのか明示した。この工夫のおかげで、企業は「自分たちの達成したいSDGsの目標がどの研究と関わるのか」解しやすくなった。現在、動き出している取り組みとして、サンゴ礁の再生プロジェクトがある。化学生命工学部の上田教授は、専門分野の再生医療技術を用いて、サンゴの高効率増殖法を企業と共同で研究・開発を進めているという。
人口関節に使用する「チタン」に微量な電気を流すことで、骨格組織と馴染みやすく、増殖率が上がるという。
また、企業や団体との連携を盛んにするため、独自のパートナー制度も開始した。全国的な大企業をはじめ、地元企業や自治体など、55団体が加盟している(2023年2月時点)。この制度はパートナー同士の連携を深めることも重視しており、定期的に開催される交流会では、登録パートナーや学生たちがSDGsに関するワークショップなどを通じて活発に意見を交わしているという。
さらに関西大学は、昨年カーボンニュートラル研究センターを設立した。「CO2排出量を2030年度には50%削減、2050年度にはカーボンニュートラル達成」を目指したロードマップを作成したほか、国内外の研究所や企業との共同研究や、情報発信を行う拠点として活用している。このセンターの特徴は、理系学部だけでなく、経済学部などの文系学部も含めて構成されている点だ。「カーボンニュートラルを達成するために自然科学分野の研究は欠かせませんが、技術の社会実装や、推進するための政策づくりなど、人文・社会科学のアプローチも必要です」と、高橋教授はその意図を語る。
万博で目標達成に向け加速
2025年には、大阪・関西万博が控えている。万博の目標にも「SDGs達成への貢献」が盛り込まれ、取り組みを加速させる絶好の機会となる。関西大学も大阪ヘルスケアパビリオンでの出展が決まっており、現在「リボーンチャレンジ」と銘打った企画で、企業との共同出展を模索している最中だ。
「地域の企業たちと一緒にコンテンツを作りたいと考えています。今回の展示だけでなく、今後の共同研究につながるかもしれません。ぜひ気軽に手を挙げてください」と呼びかける高橋教授。同氏は、万博を「一つの夢であり、明るい未来を示すもの」とも語った。その先のSDGs達成も見すえ、全学を挙げた取り組みを加速させている。
詳細はこちら
記事内の情報は取材当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。