車いすでランウェーを 茨木発のブランドがパリコレ出展を目指す
2021.02.01
茨木市に拠点を置く一般社団法人「日本障がい者ファッション協会」が、障がいの有無にかかわらず、誰もが着られるデザイン性と機能性を兼ね備えたスタイルを発信するブランドを立ち上げた。今秋のパリ・コレクション出展を目指す。
「福祉×オシャレ」で“障がい”のイメージを変える
同協会の代表理事、平林景さんは元美容師。身近な人に発達障がいがあることを知り、福祉の世界へ飛び込んだ。
現在、発達障がいをもつ子どもが通う放課後等デイサービス「かしのき教室」(茨木市)の運営に携わる。
ボトモールを着用する平林さん
「福祉にオシャレを掛け合わせ、世の中の“福祉”や“障がい”に対するイメージを変えること」を目指す平林さん。
「かしのき教室」も、誰もが通いたくなるようなカラフルでデザイン性の高い施設を目指した。
子どもの長所を伸ばすマンツーマンの指導でも人気を呼んでいる。
ブランド立ち上げのきっかけ
ブランドを立ち上げるきっかけになったのは、車いすの男性の一言だった。
「人の手を借りて試着することが心苦しくなり、オシャレは諦めた」。
誰でもオシャレを楽しめる服があればとの思いから、ブランドの立ち上げを決意。一昨年に同協会を設立した。
昨年9月には、車椅子でも簡単に着脱できる巻きスカート「ボトモール」が完成。
平林さんらの思いは行政にも届き、同月、平林さんらが「福祉と教育」をテーマに講演した際には、ゲストとして茨木市の福岡洋一市長がボトモールを履いて登壇した。
ボトモール姿で登壇する福岡市長(茨木市提供)
「ボトモール」とは
「ボトモール(bottom’all)」とは英語の「Bottom(ボトム)」と「All(オール)」を掛け合わせた造語。
性別、年齢、障がいの有無にかかわらず、誰もが履けるボトムスという意味を込めた。
腰回りはマジックテープを採用し、車いすでも一人で簡単に着脱できる。男性でも履けるよう黒を基調にデザインした。
ボトモールは車いす利用者でなくてもオシャレにきまる
「僕らは障がい者の服を作ってる訳ではない。障がいの有無にかかわらず、誰もがかっこよく、オシャレになれる服を作っている」と平林さんは話す。
各市の市長にもボトモールを履いてもらった。写真は豊中市の長内市長
吹田市の後藤市長
摂津市の森山市長
高槻市の濱田市長
パリコレ出展を目指して
「車いすでランウェーをしたときの未来がみたい」と言う平林さん。
現在、パリコレ出展を目指して、車いすのモデルを選考するなど準備を進めている。
「フォーマルな服を着たくても、車いすだとジャケットの裾を踏んで、シワになる」という車いす利用者の意見を参考に、丈の短いジャケットも制作。フォーマルスタイルも完成した。
フォーマルスタイルのボトモール
パリコレ出展への思いに共感した福岡市長の後押しで、このプロジェクトに対して茨木市の後援も決定し、フランス領事館への働きかけなどで大きな支援を得ている。
「車いすに乗ることが当たり前の世界だったら、見たこともないデザインの服が生まれていたはず。車いすだからこそかっこいいと思えるようなデザインを生み出していきたい」。
平林さんらの挑戦は続く。
記事内の情報は取材当時のものです。記事の公開後に予告なく変更されることがあります。