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【SDGs】「子どもたちに輝く未来を」音楽フェスで成功体験や憧れの場をつくる

2021.07.06

2017年から始まった、親子で楽しめる音楽フェス「Rocks for chile(ロックス・フォー・チル)」。SDGsを視野に入れ、「子どもたちの未来のための持続可能な社会づくり」を目指して始まったプロジェクトは初回から反響を呼び、多くの人の心を動かした。

しかし一方で子どもたちの直面する社会課題が浮き彫りになった。次世代に夢を与えながら、いかにして現状の問題解決に立ち向かうのか。果敢に挑むママさん社長、伊吹美里さんに話を聞いた。

伊吹美里さん プロフィール
株式会社RFC(豊中市)代表取締役CEO。2017年から服部緑地野外音楽堂でRocks for chileを主催。昨年、代表取締役に就任。

music

子どもの未来のための音楽フェス

結婚や出産を機に「働くママや子どもたちの未来にとって、いい社会とは何だろう」と考えるようになった井吹さん。そんな時に元上司から新会社参画の誘いを受けた。初めて知ったSDGsの考え方と、それに基づいた「子どもたちの未来のために」というコンセプトに共感し、2017年に株式会社RFCに参画。同時にRocks for chileの活動をスタートさせた。

 

昨年のロックスフォーチル

Rocks For Chileの趣旨に共感し、自ら手を挙げるアーティストも多数。昨年はHY、MINMIなどが出演した

「親子で楽しめるフェスを」という思いで第1回を開催した後、さらに児童養護施設へ楽器の寄贈を行った。すると「施設に入る子どもの多くが児童虐待の経験があること」「集団生活の中で文化的な体験の機会が少ないこと」などの現実を知った。「『子どもの未来のために』と始めましたが、そのために今ある問題を解決したい。どんな境遇の子どもでも夢を持てる社会にしたい、と強く思うようになったんです」。

伊吹さんが実際に夢を叶えたアーティストなどに話を聞いてみると、「周囲を気にせず、自分の道を突き進んだ」という共通点があった。「強い憧れを抱けるような場があればいいのでは」とフェスのコンテンツを見直し、アーティストと直接交流できるような「体験」の機会をつくった。

フェスきっかけに始まったプロジェクトも

そんな流れの中で、子どもたちの成功体験を目的とした活動にも取り組んだ。第2回目のRocks for chile開催となった2018年、初めて児童養護施設の子どもたちを招待したところ、「自分たちでも何かやりたい」と提案してきた。そこで、翌年のフェスで子どもたち自身がお菓子を作って販売することに。

1日目は売れ残ったが、出演アーティストも一緒になって手売りした2日目は完売。喜ぶ子どもたちを目の当たりにした伊吹さんは効果を実感し、フェス以外の場所でもこの活動を継続することにした。「児童養護施設の子どもたちが18歳になって退所した後、生活がうまくいかなくなる子が多い。その子たちが人生を切り開く助けになれば」と伊吹さんは語る。

アーティストのバックダンサーをする子どもたち

フェスでは、一流アーティストとセッションしたりバックダンサーの機会も設けられる。親がファンというアーティストと一緒に音楽を楽しむことでその子ども自身もファンになるのだとか

また、フェスの企画から関わる「子ども実行委員」は、会場マップや楽屋の名札を手作りするなど、斬新なアイディアも多数飛び出した。意欲的に行動する子どもたちに、アーティストや親は驚いたという。「自己有用感が満たされたのでしょうね。親御さんから『引っ込み思案だったが積極的になった』『かんしゃくが減った』という報告も受けました」。

そのほかにも、大阪府で児童虐待死をゼロにする取り組み「ゼロ会議」への参加や、外国にルーツを持つ子どもへの支援も行っている。

SDGsのプロとしても活躍

伊吹さんが社長に就任した昨年は、新型コロナウイルス対策のため資金繰りも難しく、一時は開催も危ぶまれたものの、クラウドファンディングを活用しながらなんとか開催にこぎつけた。コロナで活動が制限さている中でSDGsに関する資格も取得し、現在はSDGsを取り入れたビジネスについて企業でのアドバイスも行う。

今年4月には、パナソニックセンター大阪の新コーナー「あるままBASE/OYA-KO」のオープニングイベントの企画も担当。SDGsの達成や様々な社会課題解決への貢献を目指す同コーナーのコンセプトを、人気絵本作家のライブペイントで描くなど、ユニークな内容で注目を集めた。

「あるままBASE/OYA-KO」のオープニングイベント

今年4月、梅田のグランフロントにて「パナソニックセンター大阪」主催で開かれたイベント。絵本作家・谷口智則さんを迎え、会場は大いに盛り上がった

現在は、秋のRocks for chile開催を目指して動いている。「コロナで難しい面もありますが、スタッフも出演アーティストの方も『このプロジェクトは必要だ』と意義を理解してくれています。できることは何でもやっていきたい」。子どもたちの輝く未来を応援するプロジェクトは、子どもと共に確実に成長している。

 

sdgslogo

<該当目標>【1 貧困をなくそう】児童養護施設の子どもたちの成功体験の場を提供する取り組みなど【4 質の高い教育をみんなに】Rocks for chileでイベントを企画する「子ども実行委員」や、一流アーティスとの交流、自己有用感を養うワークショップコンテンツの実施など

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