【SDGs】給食の生ごみを堆肥化した土壌改良材「とよっぴー」で食物資源の循環づくりを
2021.10.05
高島さんの自宅の庭はコンポストであらゆる生ごみが堆肥化され、元気な野菜が実っていた。
マンションのベランダでもできるプランターを使った堆肥化も実験中。
豊中市の小学校39校から出る給食の食べ残しや調理くずと、街路樹の剪定枝を混合・発酵・熟成させて堆肥化した「とよっぴー」。土を元気にして花や野菜が良く育つと人気で、月2回の有料配布では100人前後の人が並ぶ。学校菜園や市農家団体には無料配布し、「とよっぴー」で資源の循環活動を広げ、市民みんなを巻き込んでエコ社会を目指す「花と緑のネットワークとよなか」理事長の高島邦子さんに話を聞いた。
市民の活動から始まった生ごみ堆肥化実験
1999年『とよなか市民環境会議』に参加した市民や市職員・事業者で、生ごみを燃やさず利用できるかを探る『生ごみ堆肥化実験プロジェクト』が設けられ、高島さんもメンバーとして参加。「当時、実験に使用していた生ごみは生協の売れ残った野菜や市役所食堂の残渣で、撮影に行った時、あまりの量の多さに衝撃を受けました。それまで自宅のコンポストで、生ごみの堆肥化を行っていましたが、今の社会はこうなってるんだ。自分の家だけで解決しててもダメだと改めて気づきました」。
何度も実験を重ねるなかで、毎日大量に出る学校給食の調理くずや食べ残しがすべて燃やされていることに着目し、それらを堆肥して食物資源を循環させるよう努めた。2000年の食品リサイクル法制定を機に同プロジェクトから市に堆肥化事業の提案を行い、豊中の肥料『豊肥(とよっぴー)』が誕生した。2004年には「花と緑のネットワークとよなか」が設立され、とよっぴーの配布活動(現在は製造も受託)、資源循環の啓発活動を行っている。
『とよっぴー』の活用が広れば 農育・食育も人の輪も広がる
花と緑のネットワークとよなかでは、とよっぴーを活用した『とよっぴー農園』で、親子で野菜の植付けや収穫の農体験ができるイベントを開催。また小学校・幼稚園・保育園に出向いて食育講座を行い、コロナ禍の今は『とよっぴーと給食』というDVDを全小学校に配布している。
『とよっぴー農園』では10月に芋掘りのイベントが行われる予定。
ごみをできるだけ出さないことが、次の世代に良好な地球を継承させることにつながる。そこで一人でも多くの人に生ごみの堆肥化を体験してもらおうと企画された『家庭の生ごみ堆肥化講習会』はすぐに予約が埋まるという。
「野菜のくずは出汁が取れるし、魚や鶏の骨は堆肥化するとカルシウムがたっぷり。生ごみを燃やすともったいないので利用してほしい」と高島さん。
ほかにも同ネットワークでは、市内農家がとよっぴーを使って育てた野菜の販売を行い、地産地消に貢献。公園や空き地で花を育てる団体にとよっぴーを無料配布する『花いっぱい運動』では、地域コミュニティが活性化し、とよっぴーを中心に食や花、緑が循環して地域の和が広がっている。
『とよっぴー』は緑と食品のリサイクルプラザで10kg250円で配布。日時は広報とよなかに掲載。
それぞれの心がけで地球環境問題は解決していく
高島さんは「食品ロスを減らすことで生ごみの発生は減り、生ごみの焼却率が低くなれば地球温暖化も防げる。私たちは温暖化の影響を受けるけれど止められる可能性があると信じています。一人一人が気をつけるだけで変わっていくはず」と語る。『とよっぴー』は生ごみを宝に変えただけでなく、誰もが環境問題を考え直すための教材にもなっている。
同ネットワークのイベントの詳細はQRを参照。
PROFILE
NPO法人 花と緑のネットワーク とよなか
連絡先:豊中市中桜塚1-24-20 豊中市立環境交流センター
地球環境を守る市民行動計画「ローカルアジェンダ21」の取組みとして2004年に設立。問合せは下記HPの問合せ欄を参照。 http://toyoppy.jp/
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