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TOP > 在宅型の「暮らしのケア」で、その人らしい最期を/リガレッセ 訪問看護ステーション茨木 > 在宅型の「暮らしのケア」で、その人らしい最期を/リガレッセ 訪問看護ステーション茨木
「訪問看護ステーション」とは、自宅療養を希望する人が安心して療養生活を送れるように、自宅に訪問して看護を行う事業所を指す。
2022年9月に茨木市耳原で開所した「リガレッセ訪問看護ステーション茨木」では、診療の補助だけではなく、利用者の思いや日々の暮らしに寄り添うケアを大切にしているという。
人生が終わりに近づくと「最期を自宅で過ごしたい」と希望する人は多くいるが、実際には呼吸器を付けていたり、点滴や注射が必要だったり、介護サービスだけでは対応しきれない人も多い。そうした事情のある人たちを、自宅での看護ケアを通じてサポートすることが訪問看護の役目の一つだ。 「その人が、その人らしく、その人の価値観で生きられること」を信条に、リガレッセの訪問看護ステーションで所長を務める古舘恵里香さんは、20年にわたる病院勤務の経験がある看護師だ。「好きなものを食べたり飲んだりといった自由な生活が、施設や病院だと限られてしまいます。長く生きてきた最期の時間に、制約が多い場所で息を引き取るのは、その人にとって最良の選択なんだろうか」と、病院で勤務するうちに感じるようになり、訪問看護の現場で利用者に寄り添うことを選んだという。
【診療補助だけでなく、その人の人生に関わる】 リガレッセが大切にしているのは、利用者や家族にとことん寄り添う姿勢だ。同所で看護師を務める北辻恵理さんは「看護師の仕事は、利用者が医療を安心して受けるためのケアが一番だと考えています。そのためには、その人がどういう生き方をしてきたのか、自宅で過ごす時間に何をしたいのか、そうした思いを日々のコミュニケーションの中で読み取り、安心して任せてもらえる関わり方を心がけています」と語る。
一人ひとりの利用者に向き合う大切さについて、看護師の石上晃輝さんもこう語る。「病院での看護と違うのは、やはり時間をとって密に関われることです。ご本人の気持ちを一番にしながら、ご家族も含めて、日々のコミュニケーションで信頼関係を築きながら、病気のこと以外の暮らしのちょっとした相談でも持ちかけてもらえるような関係を築けるように努力しています」。 リガレッセで大切にしている取り組みの一つが「タッチングケア」だ。マッサージなどのケアや、暮らしの中で触れ合う時間を多く持つことで、利用者は幸福感を感じたり、心を落ち着かせたりできるという。医師の指導にもとづいて行う診療の補助だけでなく、利用者が安心して療養生活を遅れるよう、対話や触れ合いを通じてケアを行うことを重視している。
【「地域に根ざすこと」の重要性】 リガレッセの代表理事を務める大槻恭子さんは、「超高齢化社会を背景に、日本はこれから多死社会を迎えます」と指摘する。さらに、総人口の約2割が75歳以上となる「2025年問題」を経て、病院や介護施設のキャパシティを超えてしまい、終末期のケアを受けられない人が増加すると言われている。その一つの解決策として注目されているのが、自宅でケアを受けられる訪問看護だ。 大槻さんは「多死社会を迎える日本で、看護の役割を考えたときに、病院での診療補助も一つですが、地域で受けられるケアを通じて公衆衛生を守っていくのが、看護師の次の役割だと考えています」と語り、古舘さんも、「自宅で療養生活を送りたい人にとっての、地域の受け皿になれれば」と口をそろえる。
2022年9月の開所から、すでに幾度となく看取りの場面を迎えた古舘さんは、「大切な人が亡くなるのはもちろん残念なことですが、ご家族が『いい最期を迎えられて良かった』と言ってくださり、涙と笑顔が両方ある看取りを迎えられると、私たちもいいケアが出来たと感じます」と、地域の人たちの思いと向き合ってきた率直な思いを明かした。 穏やかな最期を過ごすために、訪問看護ステーションが果たせる役割はさまざまだ。地域に根ざした活動を通じて、地域の人々が幸福に暮らせる街づくりに貢献することを目指し、リガレッセのスタッフたちは今日も現場に立ち続けている。