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-吹田市-吹田市の取り組みから見る水道の現在と未来

2024.10.24

昨今、全国的に取り沙汰されている、老朽化する水道管のトラブル。法定耐用年数である40年を超える全国の水道管は、2019年の時点で20%以上を占め、耐震化の進捗率は40%に留まっている状況だ。

かつての急速なインフラ整備が時を経て課題に

吹田市水道部に話を聞いたところ、千里ニュータウンの建設時に整備された管路をはじめ、高度経済成長期に敷設された水道管が老朽化してきているという。市全体で全長約290km(全管路の39.1%)が40年以上経過しており、これは直線距離でいえば吹田市から広島市までの距離に相当する。老朽化した水道管は、地震等の災害時に破損するリスクが高まるため、更新・耐震化が進められている。

災害リスクを踏まえ、更新・耐震化を推進

とはいえ一気にこれらの水道管の更新・耐震化を進めることは難しく、浄水所から配水池まで浄水を送る送水管などの重要な「基幹管路」を重点的に進めている。また、水道管の古さとともに、大きな病院や避難所に通じる管路、緊急交通路下に埋設されている管路など、災害時に影響の大きい管路から優先的に耐震化を進めている。また、南北に長い吹田市は地域ごとの地理的条件が異なり、市内南部に広がる海抜数メートルのエリアは、震災時に液状化のリスクがあるなど、地盤の状況によっても優先度は変わる。

地震に強い水道管 (出典:一般社団法人日本ダクタイル鉄管協会)

厚生労働省が発表する「水道事業における耐震化の状況2022年度」では、耐震基準に適合した基幹管路の割合は55.0%。近隣他市と比べると箕面市44.7%、池田市46.2%、豊中市72.4%で、2029年度までに65.0%完了することを目指している。なお、更新される管には耐震継手を有する“ダクタイル鋳鉄管”が使われており、伸縮、屈曲する抜け止め機能を兼ね備えているため、地震の揺れにも高い耐性があるという。

気になる水道料金。今後はどうなる?

水道事業の運営には、日常的な施設の運転や維持管理を始めとした事業運営のコストだけでなく、浄水施設や水道管の更新、耐震化に多額の費用が必要となる。独立採算が原則とされる水道事業は、事業収入のほとんどを占める水道料金でこれらのコストをまかなっているが、節水機器の普及などの理由から年々収入は減少を続けている。

吹田市では、水道管の耐震化に加えて、2か所ある浄水所のうち地下水を水源とする片山浄水所のリニューアルや浄水所間を結ぶ連絡管の布設など、水道の強靭化に注力しているが、やはりこれらの整備費用の原資は水道料金収入だ。

別表)吹田市水道料金の改定表(2020年度料金改定)

吹田市では、過去に低価格な水道料金を維持してきたが、水道管の更新・耐震化や施設整備費用の財源を確保するために2016年度と2020年度の2度にわたり水道料金の値上げを実施した。直近の2020年度の例を見てみると、例えば月々20㎥の水を使用する家庭の場合、およそ410円の値上げとなる試算(別表)だった。

3~5年ごとに料金水準を検証することが国から求められているため、今後数年の間に料金改定がなされる可能性はある。吹田市への取材によると、現在は「施設の整備費用や水道料金収入の見通しを立て、財政の検証を行っている最中」で、今後の進展を注視したいところだ。

 

「水のある暮らし」を将来にわたり続けるために

吹田市では、健全な水道事業を未来につないでいくためには市民の理解が必要だと考え、広報や広聴にも力を入れている。その一つが、地域の自治会と連携した防災訓練だ。災害時に使用する組み立て式の給水タンクを設置する訓練を通じて、非常時の給水体制を確認するとともに、日ごろから水の備蓄の重要性を呼びかけている。備蓄量の目安としては1人あたり9ℓ(1日3ℓを3日分)が最低限必要になるという。

また、市民の間では「水道水は飲めない」「水道水は美味しくない」とのイメージはいまだ根強い。そこで地域の盆踊りや体育祭などのイベントに出張参加し、移動式給水機「スイスイサーバー」を展示。安全性と美味しさをアピール。さらに、職員が直接地域の自治会などに出向き、水道事業の現状や課題、災害時の対応などについて、双方向のコミュニケーションを図る「水道いどばた会議」と呼ばれる活動にも力を入れている。

 

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