-豊中市- 千里中央を自動運転バスが走行 豊中市が目指す次代の地域交通
2025.05.04
3月26日出発式の様子。(写真提供:関西電力/LIGARE.News)
将来的な移動課題や地域の維持を視野に
3月26日から28日にかけて、千里中央で電気自動車(EV)バスを使った自動運転の実証実験が行われた。実施の背景には、豊中市で起こり得る「先々の課題」に備える考えがあった。
実証実験には、豊中市のほか関西電力、損害保険ジャパン、阪急電鉄が参加。日本のソフトウェア企業に開発された車両が、千里阪急ホテルを起点とした約3kmのコースを周回した。
今回の検証では基本的に自動運転で走行しつつ、駐車車両の回避などはドライバーが手動で対応した。将来的には運転席を完全に無人にした状態での走行を目指す方針だ。また、自動運転とあわせて、走行中のEVが道路から電力を無線で受けて充電する「走行中ワイヤレス給電」の実用化に向けた調査も行われた。
一般的に自治体で行う自動運転の検証は、過疎地域の移動手段の確保など、急を要する課題の解決を目指したものが多い。他方、豊中市は鉄道・バス・モノレールなどの交通網が整備されていて、交通空白地域と呼べるエリアは現時点ではない。そんな豊中市が自動運転に取り組み始めたのは、「先々の課題」に対応するためだ。
まず真っ先に挙がる課題が、高齢化への対応だ。豊中市の人口は2040年ごろまでほぼ横ばいの見込みだが、高齢化率は徐々に高まるという。そうなると坂道の多い北部エリアを中心に高齢者の移動が課題となり得る。バス路線の減便など、公共交通の再編も心配な点だ。
加えて、地域の維持・活性化も重要な課題に挙がる。すでに豊中市では、グリーンスローモビリティ(低速で走る電気自動車)を活用した移動サービス「モビとよ」を千里中央エリアで運行し、地域の支持を集めている。しかし、この住民主体のサービスにも不安材料はある。「モビとよ」の乗車定員はドライバーを除き最大3名。将来的にボランティアのドライバーが不足する可能性もある。対して、今回のEVバスであれば乗車定員は15名(自動運転時)。さらにドライバーは機械が務めることになる。従来のサービスを補完するポテンシャルがあるため、自動運転バスへの期待は大きい。
「豊中らしい」移動サービスを目指して
豊中市は2025年度以降も自動運転を活用した移動サービスの検討を続ける。都市整備課の岩崎啓介係長は「将来的には乗り合いバス・タクシー、『子育てしやすさNO.1』を掲げる豊中市ならではの送迎支援など、あらゆる可能性を検討したい」と展望を話す。

(写真提供:LIGARE.News)
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