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-大阪・関西万博- 1970年大阪万博の体験から始まった「マクロス」を生んだ河森正治の原点

2025.10.04

 

メカニックデザイナー、アニメ監督として「時空要塞マクロス」や「創聖のアクエリオン」などの作品を生み出してきた河森正治さん。2025年の大阪・関西万博ではシグネチャーパビリオン「いのちのあかし」のテーマ事業プロデューサーを務める。多岐にわたる創作のルーツに、「10歳のときに訪れた1970年大阪万博での体験があった」と振り返る。現在、万博記念公園EXPO’70パビリオンで開催中の「河森正治創作展〜万博・合体・変形・未来〜」では、創作の原点から、現在までの足跡をたどることができる。

世界の多様性が見えた1970年大阪万博での体験

富山県東砺波郡平村(現:南砺市)の豊かな自然の中で育った河森さん。3歳の頃、引っ越し先の横浜市で初めて見た蒸気機関車や電車といった当時の最先端技術に、強いカルチャーショックを受け、「“人々に、ワッと驚くような感動を与えたい”という衝動が生まれた」。それがクリエイティブな仕事に就くきっかけとなったそう。

そして、決定的な出会いとなったのは、10歳の時に訪れた1970年の大阪万博だった。3日間でパビリオンの8割以上を見て回り、アメリカ館のアポロ着陸船、日本館のリニアモーターカー、ブリティッシュ・コロンビア館の巨木、鉄鋼館の先進的なデザインとテクノロジーなどに圧倒された。言葉は通じなくとも「世界は多様だ」ということを肌で感じた体験は、「この時にデザインの力に触れていなければ今の仕事についていなかったと思えるほど。そして世界をもっと知りたいという情熱にもつながった」と振り返る。開催中の展覧会でも、当時の体験について詳しくふれられている。

世界で旅して深まった「多様性」への関心

大阪万博での体験が契機となり、クリエーターの道に進んだ河森さん。活動の中で生み出された数々の作品には、幼少期の体験から万博での衝撃、そして世界中を旅して得たインスピレーションが色濃く反映されている。代表作である「時空要塞マクロス」の歌で戦争を解決するというアイデアは、タイで出会った『戦わないことを選んだ部族』がきっかけになった。太陽の塔の内部でみた「生命の樹」は、「創聖のアクエリオン」の世界観にも色濃く反映されている。「大阪・関西万博に関わることになり、改めて内部を見たとき、無意識のうちに影響を受けていた」と気づき、驚きを隠せなかったという。

2025年の大阪・関西万博へ

現在、河森さんは大阪・関西万博の「いのちの輝き」パビリオンにも深く関わっている。このパビリオンでは、「いのちが合体変形して、新しい生き物に変形する」というコンセプトを表現。特に、大阪湾の海水で練り上げたコンクリートを使用することで循環する「いのち」のつながりを具現化している。また、2026年1月1日公開予定の完全オリジナルアニメ「迷宮のしおり」では、スマホのひび割れから着想を得て、現実社会とスマホの世界に閉じ込められたもう一人の自分、そして「一歩踏み出す」ことの葛藤を描く。万博から受けた刺激を原点とし、「いのち」のつながりと変化を問いかけ、現代そして未来へとメッセージを発信し続けている。

万博記念公園のEXPO’70パビリオン(吹田市千里万博公園)で開催中の河森正治創作展は、2026年3月1日まで。

河森正治さん 1960年富山県生まれ。アニメーション監督、企画、原作、脚本、映像・舞台演出、メカデザイン等を手がけるビジョンクリエイター。

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