
健康を決める力「ヘルスリテラシー」って何?
見極めて、理解し、活用する能力
ヘルスリテラシーとは、健康に関する正しい情報を「見極めて」「理解し」「活用する」能力のことで、概念自体は20年近く前からあるという。
“健康についての情報”といっても、何も難しい話ではなく、身近なところから気を付けるだけでも違ってくる。
<まずは自分を知る>
例えば、いま日本人の2人に1人がかかるといわれている「がん」。
「もう、がんは不治の病と言ってあきらめる病気ではなく日常生活で改善が期待できる生活習慣病なんですよ。例えば乳がんは、飲酒や運動不足が影響することが分かっています。女性の生活習慣病のリスクを高める飲酒量は、男性の半分と厚生労働省は定めています。特に女性の飲酒は注意してほしいですね」。
また、飲み会続きで調子が悪いのであれば食事を改善する、肩こりがひどいと思ったら意識して動かしてみる。
このように健康についてささいなことでも放置せず、原因を考え、調べて実践することが大事だという。
「今の自分の状態を知る」ことが、ヘルスリテラシーを高めるための第一歩だ。

健康マスター検定協会(日本健康生活推進協会) 専務理事・江木佐織さん
健康・医療分野の最新情報や、日々の生活や仕事に役立つ実践的な健康知識・ノウハウを学べる検定。合格者は資格が取得でき、地域や職場などで健康リーダーとして活躍する人も多数。2017年から始まり、文部科学省や医師会など後援。

病気に繋がる生活習慣をしていないか、家族の病歴を把握して遺伝の可能性などを探す。出産を考える女性は人生設計も考えよう。
<情報の根拠を確かめること>
「じゃあ調べてみよう」とインターネットなどを見る場合は、必ず情報元の確認をしてほしい。
「興味を持って情報を探すことは良いですが、必ずしも正しい訳ではありません。例え医師や専門家の発言であっても、実は専門外のこともよくあります。運動については医学部では教えていませんので、専門の大学や学会を調べる方が良いと言えるでしょう」。
「特に今年は新型コロナウイルス感染症で、さまざまな情報が飛び交っていました。『これを飲めば治る』なんていう根拠のない話もありましたね。でも、内閣府や政府系のホームページを見れば、正しい情報が載っています」。
根拠のない情報を鵜呑みにしてしまうと、健康を損なう可能性もある。その情報に根拠があるのか、自分に必要なのか取捨選択することが重要だ。
<日々の運動や食事が健康寿命の増進につながる>
「正しい情報を身につけたら、できるところから実践してほしいですね」と江木さん。
カギとなるのは自身の5年、10年先の健康を察知すること。
「例えば、肩こりや腰痛。これを放っておくと、冷え性や、自律神経の乱れなどにつながります。さらに5年、10年経つと姿勢が悪くなったり、老後には歩けなくなることも。『若いから大丈夫』はないんです」。
自身の意識付けもそうだが、何かあった時にすぐ相談できる“かかりつけ医”をもっておくのもおすすめだという。

インターネットなどの情報に根拠があるか調べること。有名な人や企業だとしても、正しい情報でない場合もある。

「この症状はOOかも。OOを取り入れよう」など自分に必要な情報を、正しく取捨選択し活用しよう。
<男女でなりやすい病気は異なる>
女性は長生きするが、骨が弱いため高齢になって転倒したのをきっかけに、介護を受けるケースが多い。「実は20歳から骨量は減っていくんです。カルシウムを意識的に摂ったり、1日10分外を歩いたりするだけで差がつきますよ」。
一方の男性は、うつになりやすいほか、脳梗塞や心筋梗塞なども多い。「職場でのストレスや食生活が原因だと言われています。男性は一人で抱え込みがちなので、習い事やスポーツジムに通ったり、コミュニティをもつことが大切ですね」。
それぞれ、食事面・運動面・メンタル面など対処方法が
あるので、ヘルスリテラシーを高めておけば、事前に防ぐことは十分可能のようだ。
老後の話になると若い人はついおろそかになりがちだが、その後の20~30年の過ごし方で大きく差が開くほか、健康は美容にもつながるので無関係ではなさそうだ。
<女性が周囲を健康に>
ヘルスリテラシーを高めることは、自分だけでなく周囲にも良い影響を与える。
「特に女性」と江木さん。
「女性は夫や子ども、両親にも気を配っています。女性のヘルスリテラシーが高いと、自然と家族の意識も高くなります。健康管理をしっかりしている女性が多い職場は、細やかな気遣いができているという話も聞きます」。
「もちろん男性も大事ですが、周囲への影響力が大きい女性に、ぜひ取り組んでほしいですね。あまりピリピリせず、楽しみながらヘルスリテラシーを高めてください」。

は自らの意識次第で「延ばせる」のだ。