難病に特化した訪問診療クリニックを開業しようと考えたのは、私自身の経験が背景にあります。
約20年前から脳神経外科・脳血管内治療の専門医として、さまざまな病気と向き合ってきました。例えば、脳卒中の患者に対して、病院でできる治療をすべて終えたあと、その患者がいつまでも入院していられるかと言えば、難しい時があります。
退院せざるを得ないケース、または、本人が自宅での治療を希望しているケース、どちらにしても、重い後遺症を抱えている場合、在宅医療に対応してくれる医師はなかなか見つかりませんし、転院先を確保できないことも多々あります。結果として、無理をして通院を続けている難病患者やその家族が増えているのが現状です。

これは地域の医療システムが抱える大きな問題の一つで、今後はこのような問題がより顕在化すると見込んでいます。
私のような難病を専門としている医師が訪問診療を行うことで、「自宅で治療を受けられない患者の悩み」も「治療をしたくてもできない医師や病院の悩み」も、すべて引き受けられるのではないか…と考えたのが開業のきっかけです。

訪問診療の対象となる本人はもちろん、介護する家族にかかる負担も非常に大きいという現実があります。だからこそ私たちは、訪問診療を「医師が自宅にやって来て、診察して薬を出す」といった医療的なサポートだけで完結するとは考えていません。
むしろ、それ以外の側面…本人や家族の重荷を取り除くための提案をすることが重要な役割だと考えています。例えば「この制度を利用すれば控除を受けられる」といった経済的なアドバイスなどもその一つです。

私自身、高槻で生まれ育ち、「この街の地域医療に貢献したい」と思ったことも開業を決めた理由です。これからも地域のネットワークに根ざした活動を心がけ、24時間365日、自宅で安心して過ごせる環境を全力でサポートしていきます。
記事作成日：2023年12月