-茨木市- 道路空間をひと中心に利活用 社会実験「みちクル」から見えたこと
2025.12.10
社会実験が行われたJR茨木駅近くの「中央通り」。側道への車の進入を制限して、
自転車道を確保した。ナイトバル開催時は自転車には歩道を押して歩いてもらうようにした。
10月17日(金)〜11月3日(月・祝)まで、茨木市はJR茨木駅前商店街の前の「みち(側道)」をモデル整備区間として、「ひと中心」に変える取り組みを社会実験「みちクル」として行った。期間中の金・土曜には2週に渡ってバルも開催されるなど、様々な取り組みから見えてきた姿を都市戦略チームのみなさんに聞いた。

茨木市役所 都市整備部都市政策課 都市戦略チーム後列)今西さん、大西さん前列左)参事 杉浦さん前列右)係長 佐野さん
17日間に渡って行われた社会実験 自転車と歩行者だけが通る空間
茨木市では、市の中心部をより多くの人が訪れ、滞在し、活動したくなるような“まちなか”にするため、文化・子育て複合施設『おにクル』やJR茨木駅・阪急茨木市駅をつなぐ東西軸(中央通り・東西通り)を対象に、歩きやすく、歩きたくなる魅力的な通りにするための取組を進めている。
その一環として10月に行われたのが、社会実験『みちクル』だ。これは、JR茨木駅近くの『中央通り側道』で自動車の進入を制限し、自転車と歩行者だけが通る空間を作り、利用状況について確認した。
普段は車が通る場所(幅員3.0m)を自転車が通る道(幅員2.0m)と歩道の拡幅(1.0mの拡幅)に改修して、社会実験を約2週間実施することで、普段の通勤・通学の状況や自動車利用等の確認を行った。
「今回の社会実験では、歩行者が安全・快適に通行できるか、自転車だけが通る空間は必要か、道路空間の多様な利活用を試行して地域の魅力向上の可能性を探る、という3つのことについて検証しました」と佐野さん。
車道を走ることに抵抗がある自転車利用者のために、安全で快適な走行空間を確保し、歩行者との接触リスクを減らす目的でも行われた。その空間確保のために、車道の中央線(オレンジライン)の書き換えを行い、車線分離のためにラバーポールを設置するなど、大掛かりな作業が含まれた。実験の検証は、主にビデオ撮影による利用状況の分析とアンケート調査によって、今後進められていくという。

自転車道は、歩行者の安全も確保でき、自転車利用者も安心して走ることができた。
2週に渡ってのナイトバル開催や昼イベントの取り組みも
さらに側道の利活用として、10/17、18、24、25の金・土には、商店街の実行委員会が主催でナイトバルを開催(17時〜21時)。これはJR茨木駅前商店街の協力店舗がテイクアウトメニューを提供し、道路の滞留・休憩スペースで飲食を楽しんでもらった。ほかにも空き店舗の活用として、茨木の焼き菓子販売や大学生による、ストリートファニチャーの制作(立命館大学)や、店舗廃材で防災グッズの制作(関西大学)なども行われた。

側道部分に人工芝を敷いて、歩行者天国に。夜にはナイトバルとして利活用した。

関西大学の社会安全学部の学生は沿道店舗を回って集めた廃材で防災グッズを制作・展示した。
「ナイトバルは仕事帰りの方だけでなく、家族連れの利用も多かったのが印象的で、商店街エリアの新たな魅力創出につながりました。将来的な空間利活用の可能性を検証し、側道の本格デザインの参考にしていきたいと考えています」と大西さんは期待を込める。

立命館大学BKC阿部研究室が制作したストリートファニチャー(nomadogi)は、実際にナイトバルでも利用された。
まち全体を2コア1パーク&モールと捉えたグランドデザイン
今回の社会実験は、これまでに市で実施したまちなかに関わるアンケートやワークショップの中で出てきた「ぶらぶら歩くと新しい発見がある」、「自転車でものんびり過ごせる」といった意見を実現するための検証として行われた。
「茨木市では、JR茨木駅・阪急茨木市駅の両駅周辺を『コア』、中央にあるおにクルを含めた公園や緑地等を『パーク』、2つのコアを結ぶストリートや商店街を『モール』と位置付け、まちなかを「2コア1パーク&モール」の都市構造で捉え、まちづくりを進めています」と杉浦さん。今後も、ひと中心のまちづくりが進められていくという。
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