飢餓からの脱却をめざし、自立を促す「農業支援」に取り組む
2026.01.09
左から2番目が田畑さん。
2022年、ウクライナ戦争の影響と干ばつにより、アフリカ・ウガンダのカラモジャ地域では1600人以上が餓死する深刻な飢餓が発生。摂津市出身の田畑勇樹さんは、大学を卒業後、認定NPO法人テラ・ルネッサンスに就職し、アフリカに駐在。そこから3年間、ウガンダの乾燥地帯カラモジャで農業支援プロジェクトに取り組み、現地の人々の自立を可能にする「灌漑(かんがい)農業」の仕組みを構築した。その奮闘の日々について話を聞いた。
大学生時代にアフリカへ留学
田畑さんは、高校生の時にバックパッカーの紀行文を読み、今まで自分が生きてきた常識とはかけ離れた世界への好奇心から、アフリカでの活動に興味を抱いた。京都大学在学中には、スタディツアーでウガンダを訪問し、翌年にはルワンダへの留学も経験した。「紛争の当事者でありながら、将来の平和貢献を強く願う同年代の友人たちと出会ったことが、NPO職員として働くことを決意した原点でした」と語る。
大学を卒業した2022年4月、田畑さんは認定NPO法人の職員としてウガンダに赴任。当時、ウクライナ戦争の影響による国際的な食料価格の高騰と、カラモジャ地域の大きな干ばつが重なり、食料が手に入らず、同地域では1600人以上が餓死するという悲劇が起こっていた。「私は本来、別の地域でのプロジェクトを担当する予定でしたが、どうしてもカラモジャに行きたいと上司に伝えると、快諾してくれました」。
食料配布の依存から抜け出す自立をめざした「農業支援」
カラモジャの餓死者の中には単純に食べるものが無くて餓死する人もいるが、継続する飢えによって体の免疫が低下し、感染症にかかって命を落としてしまう人も多いという。緊急的な救済手段として、WFP(国連世界食糧計画)などが住民に食料を配っているが、恒常的な飢えが課題のカラモジャでは本来は緊急であるはずの食糧配布すら恒常化していた。そこで田畑さんらが選んだのは、受け身になりがちな緊急食料配布ではなく、地域住民の自立を促す灌漑農業の支援指導だった。
「雨季の間に深さ4〜5メートル程度のため池を掘り、水を蓄え、その水を利用して共同農場で穀物や野菜を栽培する仕組みです。でも住民からは、飢餓で苦しんでいる状況で『なぜ今すぐ手に入る食料じゃないんだ』といったネガティブな反応を受けることもありました」と田畑さん。
さらに、プロジェクトの遂行においては、行政や政治家といった現地の公的機関、地域権力構造との交渉・調整が最も大変だったという。「灌漑の建設においても、契約が守られず、手付金を払った途端に業者が姿を消すといった事態もありました」。

本来は肥沃な土地であるカラモジャは、ため池などで水の問題を解決すれば、多くの作物が育つという。自分たちが育てたトマトを買ってもらうことができれば、利益を得て自立につながる。
紛争の無い平和な世の中へ
植え付けから収穫まで約4ヵ月を要したがトウモロコシや豆が実り、目に見える成果が出始めると、住民の意識は大きく変わったという。「事業当初は懐疑的だった住民が、収穫したトマトを手に『これを私たちから買ってほしい』と言ってくれた時はうれしかった」と語る田畑さん。現在はNPOを退社し、日本とアフリカを行き来しながら、アフリカ地域の紛争と平和をテーマとした次作の執筆に取り組んでいる。「中高生や大学生の若い世代で、アフリカに関心のない方にこそ読んでいただきたいですね」。

3年間に渡る農業支援の取り組みを執筆した田畑さんの書籍「荒野に果実が実るまで」。
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