-吹田市- 聞き書きされた40もの吹田の民話にふれる物語の舞台を訪ねる工夫も凝らした一冊
2023.11.09
西日本出版社の内山さん。
「垂水の滝、佐井の清水、山田の銅鐸等の民話があります」。
それぞれの町の長老から直接話しを聞き、吹田市報で連載されていた「ききがき 吹田の民話」。吹田歴史文化まちづくりセンター浜屋敷で理事を務める内山正之さんが、この民話を自身の出版社で再編集して発刊。「より多くの人に楽しんでもらって、地元愛を持つきっかけになれば」と語る。
人形劇団主宰の阪本一房さんが
聞き書きした40の民話を収録
この本の元となっているのは、昭和59(1984)年3月に吹田市広報課から発刊された同名の冊子。南高浜町にある浜屋敷で同冊子を見つけた内山正之さんは読み進めるうちに「これはおもしろい」と夢中になっていったという。
旧吹田村を中心に、山田や佐井寺など古くからある町に伝わる民話を聞き書きしたのは、1975年から2000年までに吹田市出口町で「人形劇団 出口座」を主宰していた阪本一房さん。この民話は阪本さん執筆で吹田市の市報に連載されていた。阪本さんはこういった北摂地区の民話を題材としたオリジナル作品を製作し、人形劇や紙芝居として発表していたという。「この民話は、阪本さんがその土地を訪れ、長老から聞いたことに少しフィクションを加えられたもので、そのため『ききがき』の名がつけられています」と内山さん。
阪本一房さん(1997年撮影)
物語をイメージさせる切り絵の挿絵
地図を掲載して来訪も促進
四十篇の民話は、弥生時代から明治時代までの吹田の生きた歴史を垣間見ることができる。また内容をより深く理解してもらえるように、編集者である内山さんならではの工夫が凝らされている。
ひと民話ごとに、それぞれ2見開きで展開され、冒頭に民話を形作った歴史的・文化的背景を紹介し、最後に民話の舞台を訪ねることができるように詳細な現在の地図を掲載している。挿絵の切り絵も吹田きりえグループの協力を得て、書籍にも掲載されている。
「私自身も、吹田で35年ほど仕事をしていますが、来た当初の吹田のイメージは万国博覧会とニュータウンの街という印象で、こんなにも歴史や民話があることに驚きました。自分の住んでいるところの近くにこんな民話があることを知っていただきたいですし、これをきっかけに地元への愛着がより深まればうれしいです」と内山さん。
この書籍は『吹田歴史文化まちづくりセンター浜屋敷』の開館20周年の記念出版にも位置づけられ、歴史的背景などは吹田歴史文化まちづくり協議会の理事長の藤本衛さんが監修されている。またYouTubeの『浜屋敷通信』ではフリーアナウンサーの野村朋未さんによる民話の朗読の動画をアップしていて、書籍と合わせて楽しむことができる。
吹田市内の本屋では、民話の舞台となった場所を地図で紹介している。
YouTube『浜屋敷通信』では、この民話の朗読を配信中
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