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箕面市出身の犬丸幸平さんの『最後の皇帝と謎解きを』が『このミステリーがすごい!』大賞・大賞受賞

2026.02.08
最後の皇帝と謎解きを(宝島社) 1,760円 全国の書店で発売中

 

箕面市出身の作家・犬丸幸平さん。海外から仕入れた絨毯を販売する自営業を営む傍ら、執筆活動を続け、このほど『最後の皇帝と謎解きを』で宝島社主催の第24回『このミステリーがすごい!』大賞・大賞を受賞した。同作は清朝滅亡後の中国を舞台に、日本人絵師と清朝最後の皇帝が謎に挑む歴史ミステリーだ。

未知の世界への憧れ、40カ国を旅したバックパッカー

大学卒業まで箕面市で過ごした犬丸さん。高校時代は箕面駅近くのパン屋でアルバイトに励み、売れ残ったパンを翌日学校で友人に配っていたと当時を懐かしむ。「千里中央の屋上で友達と将来を語り合ったり、どこにでもいる普通の高校生でしたね」。

そんな犬丸さんの原点は、幼少期に眺めた世界地図や図鑑にあった。「爬虫類が好きで図鑑を見ながら生息しているギアナやアマゾンって、どんなところなのか想像を膨らますのが楽しかった」。「未知の世界」への憧れは大学生になって結実し、バックパッカーとして世界40カ国を渡り歩く。特に南米一周の旅は強烈だった。ベネズエラでは、警察官が入国を許可する代わりに金品を要求してくるという噂を聞き、米ドルをシャンプーのボトルに隠して持ち込んだという経験も。一方で、アマゾン川でのピラニア釣りや、その翌日に同じ川で泳いだり、楽しい思い出もたくさんあったと振り返る。「当時はまだ作家になるとは思っていませんでしたが、この時に培われた『行動力』が、後の人生の大きなポイントとなりました」。

歴史への探求心が生んだ受賞作

作家を目指すきっかけは、幼少期に夢中になった『名探偵コナン』。そこから推理小説の世界にのめり込み、大学4回生の就職活動を終えた頃「自分でも書いてみたい」という気持ちが芽生えた。一度は物流会社へ就職するも、会社員として働きながらの執筆に限界を感じ、1年半で退職を決意。そこで犬丸さんが選んだのが、自営業の道だった。パキスタンなど、日本人があまり行かない国の絨毯を仕入れ、販売をしている。「バックパッカーの経験があったからこそ生まれたアイデア。これなら生計を立てながら、小説と向き合う時間を生み出せると思ったんです」。

そして2023年から『このミステリーがすごい!』大賞に挑戦。3度目の挑戦で見事大賞に輝いた受賞作『最後の皇帝と謎解きを』は、清朝が滅びた後の1920年代中国を舞台にした歴史ミステリーだ。「もともと歴史、特に近代史に関心がありました。当初は満州国をテーマに考えていましたが、資料を読み込むうちに清朝の魅力に惹きつけられ、舞台設定を変更しました」。連作短編形式をとり、各章で殺人事件から日常の謎まで、多彩なミステリーが展開される。そして、物語全体を貫く大きな仕掛けも。「最後まで読むと、きっと驚くはずです。物語に散りばめられた伏線があるので、2度読むとまた違った発見があると思います」。登場人物たちの心情や、激動の時代を生きた人々の信念を深く掘り下げて描いた点にも注目してほしいと語る。

歴史とミステリーを融合させ、新たな世界を

「最終的には専業作家として、たくさんの小説を書いていきたい」と、今後の展望を語る犬丸さん。歴史への深い造詣を活かし、これからも歴史ミステリーを主軸に執筆活動を続けていきたいという。「史実に基づくだけでなく、『もしも』の世界を描く改変歴史小説にも挑戦したいです。その世界でしか成立しないミステリーを創り出すことで、新たな驚きと感動を届けられたら嬉しいです」。

犬丸幸平さん
1994年、大阪府箕面市出身。神奈川県川崎市在住。京都産業大学英米語学科卒業。バックパッカーとして中東やアフリカなど40ヵ国を巡った経験を原点に、現在は絨毯のバイヤーと作家を兼業。

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